休憩中や移動中、眠るまえなどのちょっとした時間にたのしめるショートストーリーをお届けします。
3〜5分で読める一話完結の物語です。
繋がりはありませんので、どのお話からでも読んでいただけます。
ほっこりできたり、ちょっと元気になれたり、自分を大切にしたくなるような物語をお届けできれば嬉しいです。
パチリ、と可南子は目を覚ました。
耳元ではスマートフォンがアラームを鳴らしている。
液晶画面で7:04を確認した可南子は、寝っ転がったまま、んーと伸びをしてから、身体を起こした。
カーテンを開ける。8月の太陽はこの時間からもうやる気満々だ。
洗面所に向かう前に、ポット型の浄水器から電気ケトルに水を注ぎ、電源を入れた。

冷水で顔を洗ってタオルで優しく拭いたら、化粧水で肌に水分補給をさせていく。
乳液で蓋をしはじめたあたりでキッチンからコポコポとケトルの音が聞こえてきた。
可南子は、顔に塗った乳液を広げつつケトルのボタンをオフにする。
だいたいこのくらいで止めると、ちょうど飲みやすい温度になるのだ。
日焼け止めまで塗りおわると、マグカップにお湯を注いでベッドに腰かけた。
立ち上る湯気の具合からして、飲むには少し熱すぎるかもしれない。
可南子はふーふーと息を吹きかけた。
朝に一杯の白湯を飲むようになったのは今年からだ。
7月に入ってすぐに夜通しエアコンを使うようになった。快適に眠れるけれど、その分寝起きの身体がひんやりしてしまう。
最初はホットコーヒーで身体を温めていたけれど、日によってはコーヒーを三杯も飲んでしまう日があり、「お湯でも飲むか」と思いついたのがこの習慣のきっかけとなった。
白湯といえば、薬缶で沸かしたお湯を冷ましたものと思っていたけれど、調べてみるとそうでもなかった。
浄水であれば沸騰させずとも温めるだけで白湯と呼べるものになるらしい。
可南子は白湯に口をつけ温度を確認してから、マグカップを傾けた。
暖かい白湯が体内を通っていくのがはっきりわかる。
「はぁ~」
ただのお湯が食道を通って胃に届くだけなのに、どうしてこんなにも身体が温まるんだろう。
再び白湯に口をつける。
寝起きの身体に心地よい温かさがしっかりと染みわたっていく。
顔を洗うと刺激によって目が覚め、白湯を飲むと、身体の起動がスムーズになるような感覚がする。
なんというか、ゆっくりとスイッチが入っていくような感じ。
思い付きで始めた習慣だったけれど、思った以上に日々を豊にしてくれている。
白湯を飲み切ると、可南子は弾みをつけて立ち上がった。
「よし、動くか」

