休憩中や移動中、眠るまえなどのちょっとした時間にたのしめるショートストーリーをお届けします。
3〜5分で読める一話完結です。
繋がりはありませんので、どのお話からでも読んでいただけます。
ほっこりできたり、ちょっと元気になれたり、自分を大切にしたくなるような物語をお届けできれば嬉しいです。
注文した料理が届けられると、私と千夏はすぐにスマホを構えた。
「めっちゃ美味しそう!」
「ほんと! それに映える!」
私は、デミグラスソースとカニ味噌入りのクリームソースのかかった二色オムライスの写真を撮り終えると、スプーンを手にした。
「でさ遥、さっきの続きなんだけど」
同じく写真を撮り終えた千夏がフォークにパスタを巻き付けながら、話しを再開する。
千夏とは大学で出会った。
就職で上京してからも半年に一回はご飯を食べつつ近況を報告し合う関係がもう10年も続いている。
普段手が出せないちょっといいランチを食べ、その後は買い物をしたり、お茶したりして夕方に解散するのがいつもの流れだ。
「うちの上司、情報抱え込む癖あるって言ったじゃん。この前もそれで提出期限ギリギリで仕事頼まれてお昼行けなくてさ」
「え? それ、その仕事終わったあと、休憩取れたの?」
私が問うと、千夏は首を横に振った。
「ミーティング入ってたから、結局行けずじまい……」
「えー、それは酷いよ」
会話はもっぱら仕事のこと。
困った上司や後輩のこと、煩雑でやりづらい仕事が話題の中心だ。
「遥は? 最近忙しい?」
「うん。ほぼ毎日残業してる。
なのにさ、上司がルーティン作業を自動化してくれって言ってきて。今年の全社目標がAIとか自動化ツールを使って残業時間を前年度より10%削減するってことで言われたんだけど、毎日残業してるから新しいことやる余裕なんてないわけよ!」
「余計に残業時間増えそう」
「ほんとそれ」
レストランでの食事を終えても話題は尽きず、私たちは喋りながらゆっくり話せそうなカフェを探した。
席につき、二人でメニューを覗き込む。
ホットコーヒーでいいかな、と、メニューに目を走らせたとき、クリームソーダに目が止まった。
『千夏、内定おめでとう!』
『遥もおめでとう!』
大学4年の夏、千夏と二人で就活終了を祝いあったワンシーンが脳裏をよぎった。
「……、私、クリームソーダにしようかな」
「珍しいね」
「うん、ちょっと思い出して……。
ねぇ、4年の夏にさ、大学近くのカフェで内定祝いしたの覚えてる?」
「え? ……。あー、やったね!」
千夏も思い出したようで、嬉しそうに声を上げた。
「私、第一志望の内定が嬉しすぎて浮かれちゃってさ、炭酸苦手なのにクリームソーダ飲んだの」
「そーだ、そーだったわ。
私は確か、『第二志望だけど希望業界だから頑張る』って言ったわ。あと、『会社が勧める資格、全部取る!』って……」
高揚していた千夏の声が急にしゅんとする。
「10年経ってまだ1個しか取れてないや……」
「私も、なんか……、仕事と会社に悪い意味で慣れちゃってたかも」
上司から自動化を勧められた業務は、私が入社した当時から、「もっと楽にできるといいんですけど……」と周囲にこぼしていたものだ。
当時は実現する技術がなかったが、いまはある。
千夏も当時と同じものを頼み、10分ほどで私たちの元にはクリームソーダとアイスレモネードが届いた。
緑色のメロンソーダをストローで吸い込むと、懐かしい甘さがパチパチと口の中で弾けた。


